社会のあり方が大きく変わり、ピアノレッスンでも
・この機会に譜読みができるようになりたい
・巣篭もりの間、せめて音楽にふれたい
・今までと同じようにレッスンを続けたい
と、様々なニーズがうまれています。
当教室では、通っている生徒さんのオンラインレッスンをWhereby(ウェアバイ)、新規の生徒さんのオンラインレッスンをSkypeで使い分けしてレッスンを継続中。
音楽が救いになるとは言いませんが、先の見えない今、レッスンを提供し続ける意味はある!と私は考えています。
一ヶ月弱、運用してみた現在、
・なぜツールを使い分けするの?
・オンラインで音楽レッスンする上でのメリットは何?
などなどについて、書いておきたいと思います。
収束しない感染症とオンラインレッスン:変化は突然に
ウイルスの流行スピードはすさまじかった‥‥。
個人教室なので、「どういう状況になったらどう動くべきか」という指針をぼんやりは決めていたものの、緊急事態宣言は「今くる?!」というのが正直な心境でした。
なので、SkypeとWherebyとLINE通話を最初から意識的に使い分けしていたわけではありません。
ただ、オンラインレッスンに切り替えるにあたり、「こんなツールがいいな」「この特徴ははずせないな」という理想はあり、それが使い分けにつながっていったように思います。
では、(自分が再確認する意味も込めて)SkypeとWherebyについて簡単に概要をご紹介しましょう!
LINEについては日常的に使われているツールということで、割愛させてください(公式サイトを見て‥‥)。
Skype(スカイプ)とは
Skypeは、無料でメッセージのやりとりやビデオ通話ができるWebツールです(有料版もある)。
2011年にマイクロソフトが買収して以降は、同社が提供しています。開発場所はエストニアだとか。ほほう。
スマホでもPCでも使えるため、アプリを入れているという人も多いかもしれません。
私が初めてSkypeを使ったのは、海外渡航時の『国際電話以外の生存確認手段』としてでした。
ポケットWi-Fiを経由すれば、高額な国際電話をかけなくても家族と連絡が取れるんですよね。それが当時はとてもすごいことのように思えました。
その後も、外国語レッスンなどで活用していました。
調べたところ、最大で250人が同時につながることができるとか!
ファイルの共有もできるので、課題を送受信するのも簡単。画質や音質もわりとクリアかなという印象です。
・Skype
Whereby(ウェアバイ)とは
Skypeと違って「何それ?」となるのがWhereby(ウェアバイ)かと思います。
なぜ、圧倒的シェアを誇るZOOM(ズーム)を採用しないのかといわれれば、「導入検討時に脆弱性が指摘されていたから」という理由にほかなりません。ちょうどオンラインレッスンに切り替えようと悩んでいた時、”米国の学校でZOOM禁止令が出ている”という報道を目にしたのです。
ITの会社はアップデートや修正もスピーディな印象があるので、数日後には評価も変わっているかなと若干考えはしましたが、この弱小教室、万が一、億が一にも不手際などあればお取り潰し(ちょっと違う)!廃業の危機!とおののき、とりあえずは導入を見送ることにしました。
Wherebyは、登録者(私!)がURLを発行することで、ユーザーの方が登録なしで使えるWeb会議ツールです。サービスの本拠地はノルウェー。
Skypeのようにメッセージをやりとりしたり、画面を共有することも可能で、無料だと4人まで同時に会話ができます。登録画面が英語オンリーなのでビビり倒すという難点はありつつも、スマホでもPCでも使える上、私以外は利用者登録をしなくてもサービスを利用できるという点に強く惹かれました。
サービス名称は、appear.in(アピア・イン)から現在のWherebyに変更になったとか。導入後に知りましたが、Wherebyはソフトウェアの仕組みであるAPIが公開されていて、「たくのむ」というオンライン飲み会サービスがWherebyのAPIを利用しているようです。ビール色です‥‥おいしそう。
・Whereby
WherebyとSkype
ざっくばらんに言うならば、WherebyとSkypeは使い勝手にそう差はありません。まだ使ったことがないのですが、おそらくZOOMも同じような感じだと思っています。
ではなぜ、そもそも、教室で2つ(+LINE)のWebツールを使い分けようと決めたのか?
答えは、それぞれにメリットを見出したからです。
Wherebyは登録不要で使える=利用のハードルが低い
現状、今まで通ってくださる生徒さんには、Whereby(時々LINE通話を補助で使います)の利用をお願いしています。
Wherebyの最大の魅力は、
・ユーザーは面倒な登録が不要
という点でしょう。言い換えれば、
・URLを受け取りさえすれば個人情報は一切記述不要
といえます。
感染症の流行に伴い、親御さんもリモートワークや自宅待機という方が多くなりました。そのため、「PCは仕事で使わないといけない」、「タブレットはレッスン時間中、仕事の連絡がくるかも」という親御さんもかなりの確率でいらっしゃいます。
また、ITに詳しくないご家庭にとっては、「いきなり個人情報の入力を迫られる」という状況は決して好ましくないでしょう。
しかし、こちらが用意したレッスン用URLをクリックすればいいだけのWherebyなら、生徒さんは個人情報を一切入力する必要がありません。
名前を記載する旨を促されますが、これは「Guest」のままでも「A」、「電車」など全く本名と関わりのない名称を入れていただいて問題なしです。
個人情報の入力が必要ないシステムは、子どもスマホや家庭用のタブレットからでも安心してアクセスができます。実際、子どものスマホでログインしたり、家族の共用端末からアクセスしました、という方が大半でした。
情報を悪用する、漏洩するといったリスクが著しくゼロに近いため、私も安心してログインをお願いすることができています。
これが、Wherebyを通常レッスンの代替手段に選んだ理由です。通いの生徒さんは、すべてメールアドレスかLINEの交換を済ませているため、ファイルのやり取りが必要になったり、アクセスが不安定になったりした時は、メールやLINEで連絡を取り合って必要な対策を講じるようにしています。
ネットは接続状態に「絶対」がないので、第二、第三の対策を講じることが重要ですね。
Skypeはアカウント必須=一定のネット知識を有した人の証明に
Wherebyとは違って、Skypeは使用にあたり、Microsoftアカウントが必須となります。
つまり、個人情報を登録しないと使えません。
すでに入会情報を記載いただいている生徒さんに、さらに個人情報を入力し登録をお願いする。これは、小さな個人教室にとって大きなハードルでした。そのため、既にご入会いただいている生徒さんには、(個人情報を記載しなくても使える)Wherebyでのレッスンをご案内しています。
しかし、新規の生徒さんにおいては、これとは正反対の考え方で臨んでいます。
・本気か否かの熱意度を推し量れない
(突如キャンセルや個人情報悪用などなど)
・ネットツールにどれくらい習熟しているか分からない
オンラインレッスンご新規さんの場合、特に問題となるのが2つめに挙げた「ネットにどれくらい慣れているか分からない」という点です。
慣れていない方の場合、不具合や理解不足によってレッスンが進められなくなる可能性が高くなります。かといって私もネットのプロではないので、レッスン中の通信トラブルをすべて解決できるわけではありません。
また、ネットリテラシーのない人とURLを共有する危険性も避けたいところ。ご本人に悪意がなくても、教室のオンラインルームが何らかの被害を被るリスクがあるからです。
その点、アカウント登録と連絡先追加をしないと使えないSkypeをレッスンツールにすれば、申し込みされる生徒さん(あるいはご家庭)はある程度ネットツールに慣れていると考えられます。
なので、新規体験レッスンはSkypeを使っておこなうことにしています。
オンラインレッスンはエラーに備えツールを使い分けるべし
オンラインツールは、エラーや不具合が突然起こる可能性をはらんでいます。
不具合の原因は、主に次の二つに大きく分けることができるでしょう。
・ツール自体に何らかの問題(アップデート時のバグなど)が生じる
・通信環境と関連してエラーや遅延が引き起こされる
つまり、体感的には、通ってくる生徒さんが途中で怪我をしたりアクシデントに巻き込まれたりする確率よりも、オンラインツールで何らかのエラーに遭遇する可能性の方が高いと見積もっておくべきです。
そのため、
・SkypeとPCメール
・WherebyとLINE(チャット&ビデオ通話)
など複合的にオンラインツールを使い、生徒さんが少しでも安心して授業を受けられる体制を整えておくのが得策かと思います。
音楽教室が考えるオンラインレッスン
どんな物事にも、メリットとデメリットがあります。
また、見方や環境の違いによってはメリットとされる点がデメリットに、デメリットとされている点を利点と感じる方もいらっしゃるでしょう。
オンラインレッスンのメリット
ここで挙げているのは、あくまで当教室を運営していく上で私が感じた特徴です。
各教室のレッスン形式や地域によっても異なってくると思いますが、「これからオンラインレッスンを導入したい」という先生や、「そろそろオンラインで習い事を再開する?」と迷っている方の参考になればと思います。
感染リスク0へ
いわずもがな。ピアノレッスンは、マンツーマンなので、集団で活動する部活動やスポーツ・サークルと比べると、それほど感染リスクは高くないと考えています。
ですが、密閉された狭い空間で一定時間過ごす、という「2密」には当てはまってしまうため、
・飛散防止(マスク着用)
・換気
・除菌
を徹底しても、感染の危険性をゼロにすることはできません。
ゼロにできるのは、物理的に対面しないオンラインのレッスン形態です。
今は、大抵の楽譜がAmazonや楽天といったネットショップでも注文できるので、家から出ずに教本や弾きたい曲を調達可能。ダウンロード購入して自宅のプリンタで出力できる曲も多く、こうした文明の利器に随分助けられているように思います(配達業者さまに感謝!)。
レッスンに集中できる
実際に取り組んでみて気づいたことですが、画面越しにやり取りすることは、対面式よりも集中力を必要とします。画面を通して向き合い声や音を聞くことは、TVやYouTubeを漫然と眺めているのとかなり異なります。
相手の音声にかぶせてしまうと言葉は届かないため、お互いタイミングを見極めてアクションを起こす必要があります。
また、話を理解できているかどうかの表情を読み取るのも対面より難しいため、
・大きな動作でうなずく/返事をする
・OKサインを体で作る(スタンプなどでアクションする)
・普段よりゆっくりと話す
という意思表示が必要になります。
こう書くと大変なようにみえますが、対面式よりもきちんと理解をしてから先に進まなければならない分、集中してレッスンに取り組めるので1回のレッスンが濃くなったように感じています。
園児さんの場合は、お返事をする、話を聞く時は話している人を見る、といった所作をオンラインレッスンを通して身につけることができました。
生活リズムを整えられる
オンラインレッスンは、休校中の生活リズムを保つ上でも役に立てているようです。
おそらく、長期休みがあらかじめ決まっていれば「あれをしよう」、「これをしよう」と計画を立てられる子が大半でしょう。しかし今回のように休校がいきなり決定・通知され、緊急事態宣言によって大人もテレワークや自宅待機を余儀なくされる、そしてウイルス流行という性質上、先の見えない状況におかれる。どんなに優秀な子どもでも、このような環境下で戸惑ったり生活リズムが乱れるのはむしろ当然のことです。
むしろ、学校が好きという子や今まで複数の習い事をバランスよくこなしていた子ほど、宙に浮いた時間を持て余して、結果ルーズな生活スタイルにはまってしまうことでしょう。今回、当教室でもいきなりオンラインレッスンに切り替えざるを得なかったため、生徒さんや保護者の方がどのように感じるか、非常に不安でした。
ですが、
・オンラインレッスンの形で継続してもらえて、モチベーションを保てた
・課題や宿題だけをこなす毎日にならないのはピアノレッスンがあるおかげ
・ストレスで機嫌が悪くなってしまうことも多い中、レッスンの前後は笑顔が戻る
という嬉しい(嬉しすぎる)反応をいただくことができました。
先の見えない不安は私も同じですが、ポジティブな対応を財産に、オンラインレッスンがさらに楽しくなるよう、工夫をしていけたらと思っています。
ピアノを二台使って学べる
‥‥優雅な先生のお宅は、ピアノが二台ドーンと並んでいることも珍しくないのですが、私は優雅とは程遠い環境にあるもので、ピアノは一台です。
普段は一台でそれほど不便と感じませんが、弾いている時の手首の動かし方や、指先への体重のかけ方などは、二台のピアノで隣同士(物理的距離は遠いですが)レッスンする方が伝わりやすいように感じます。
レッスンを通してIT体験できる
いよいよ2020年からプログラミング教育が始まりました。
ITのプログラムだけでなく、そうした思考力を養うことが教育の目的とされていますが、ウイルスによって世界中が変化した今、ITに習熟しておくことは子どもにとってだけでなく大人にとっても、重要課題といえます。
レッスンをオンラインで受けることで、今までとは違うパソコンやスマホの利便性にふれ、時にその限界を知る。それは、ピアノに取り組むことと同じくらい、貴重な体験になるのではないでしょうか。
オンラインの利点や可能性を実体験として理解することで、人が対面してコミュニケーションをとる大切さにも改めて気づくことができると、私は考えています。
オンラインレッスンのデメリット
2020年は、プログラミング教育イヤーでもありますが、まだまだ国内では「未知の分野」です。
オンラインレッスンのデメリットは、この「未知」が「既知」に変わることで解消されることもあるような‥‥。
通信環境やデバイスで音質が左右される
Wi-Fiが充分な通信速度を保てない時は、音が歪んで聴こえたりタイムラグが大きくなったりします。古いデバイスやOSではうまく機能しないこともあり、日常的にパソコンを使っていないと戸惑ってしまうケースもあるでしょう。SkypeもWherebyも、スマホアプリがあるので4Gでも利用可能ですが、通信料や通信の安定性という観点から、Wi-Fi環境を自宅に整えるのが現実的です。
パソコンやWi-Fiといった設備を受講生がどのように確保するかという問題は、大学のオンライン授業開始にあたっても議論されていますが、今後は小中学生やリモートワーカーにも、同じ問題が降りかかってくるのかもしれません。
なお、パソコンは機種によって別途Webカメラやヘッドセットを購入してつけないと、スムーズにレッスンできないこともありますが、付属品なしで使える機種もたくさんあります。
連弾や合奏には工夫が必要
ネットワークを使った送受信は0.5~1秒程度の遅延が生じるため、一部のサイトでは「合奏はできません」と解説されることもあります。確かに、通常のレッスンのようにアイコンタクトを取りながらピタリと合った連弾をすることはできません。
しかし、あらかじめ講師の方で製作・録音した音源を画面共有(画面シェア)で流せば、レッスンすることは可能です。
なお、ヤマハは2020年6月頃にオンライン遠隔合奏サービス「シンクルーム(SYNCROOM)」を公開予定とのことです。最大5カ所を遠隔でつないでオンラインセッションができるとか!
・シンクルーム
現在すでにβ版がリリースされていて無料で使えるようになっています。
休校中の軽音楽部やサークル活動に使ったら楽しいかもしれないですね。特に、中高生は試行錯誤しながら取り組むこと自体、いい思い出になるかも。私はまだ使ったことがありませんが、時間を作って試してみたいと思っています。
オンラインも対面レッスンと同様、工夫が大事
オンラインレッスンは、設備を整えただけで完結するものではなく、改善や工夫をしながら進化させていくべきだと考えています。
それを続けることで、オンラインにおいても教室の特徴が明確化され、「まちのピアノ教室」の差別化がはかられるのではないでしょうか。
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