一対一で大人と接する習い事は、人への対応を学んでいく場でもあります。
例えば、将来、お子さんが他のお宅へ遊びに行った時、家庭教師のアルバイトでお宅訪問をした時など。
「知らずに恥をかいてしまった」とならないように、知っておきたいマナーはいくつかあるのではないかと、当教室は考えています。
習い事教室のマナーとは
習い事のマナーには、生花や舞踊といった格式ある芸事ならではのしきたりと、ピアノや習字のような一般社会に近い世界でのマナーの2つがあると思っています。
生花や舞踊、バレエなどで求められるマナーは、その所作や考え方、先生と向き合う姿勢も含めて習い事として成立しているのでしょう。
様式美という言葉がありますが、しきたり通りに振る舞うことで芸事の良さや真髄が感じられるように作られている世界なのだと思います。
音楽の世界もかつては、厳しい上下関係や独自のルールがあったようです。
ですが、私が子どもの頃にはすでに「しきたりを重んじる教室」と「現代にアップデートした価値観で運営されている教室」がありました。
音楽大学でも、古い時代のマナーについて大学が廃止を通達するなど、変革の時期にあった印象です。
マナーの線引き:時代遅れか普遍か(オルガンとパンツの話)
マナーについては、「考え方が古い」、「意味がない」、「時代遅れだ」という意見も見かけます。
その意見を眺めていて、大学時代の「オルガン演奏」の講義を思い出しました。
私はこの講義をとっていなかったのですが、受講している友人たちは、講義の日には決まってパンツスタイルでした。
「私はワンピースが好きだから、パンツは体操服しか持っていない」なんて豪語していた友人ですら、ボトムスを購入・持参し、オルガンの講義の前には必ず着替えていたので、日頃からちょっと不思議に感じていました。
ある時に理由を尋ねたところ、「別にルールじゃないんだけどね。でも‥‥下着が見えたくない人はパンツスタイルがいいんじゃない?って先生が」と言われました。
オルガンは手だけでなく、足もかなり活発に動かします。そのため、弾いている間に、椅子の上でスカートがかなりずり上がってくるそうです。「スカート丈がだんだん上がってくると、見ている方もちょっとドキドキしてしまうでしょ」と、先生はおっしゃっていたとか。つまり、極めて現実的な理由でパンツスタイルを推奨していたわけです。
当時は、「カジュアルすぎるから」という理由で、レッスン時にスカート着用を義務づけている古風な先生も在籍していた時代でした。オルガンとその先生の授業が同日にあった場合は、着替え必須です。
なかには、贈り物や電話のルールを自ら定めるような、理不尽なしきたりも耳にすることがあったので、オルガンの先生の実利的なルールは新鮮に感じられ、いつまでも覚えています。
特に、「目上の人に礼儀なんて必要ない」というよう極端なマナー不要論を見ると、必ずオルガンのルールを思い出します。
一見すると謎に思えても、意外に根拠がある古いマナーだって結構あるのではないかと。
エムジック音楽教室が守りたいマナーは3つだけ
市川市エムジック音楽教室が掲げる「守るべきマナー」は3つです。
オルガンのエピソードと同じく、3つのマナーにも私なりの現実的な理由はあります。
月謝袋は両手で受け渡しする
月謝袋は、生徒さんも講師も両手で受け取り、受け渡すようにしています。
月末に空の月謝袋を返却する時も、私は両手で生徒さんに渡すか、両手で台に置いて持っていってもらうように声かけします。
これには二つの理由があります。一つは、多くの生徒さんが「親御さんが準備した月謝袋」つまり「他の人から預かったものを渡している」ということ。
社会に出ても、上司から預かった書類を無造作に扱ったり、取引先からの資料を雑に管理したりすることはないと思うので、これは一般常識的なマナーだと思っています。
もう一つは、やはりお金は丁寧に扱うのが適切だと感じるからです。
古い、日本的だと思われるかもしれませんが、食べ物とお金は粗末に扱うのが難しく感じてしまいます。
ただし海外では習慣が異なるので、海外生活の長い生徒さんを迎えたら、その時は合わせて対応をすると思います。
時折議論される、新札(ピン札)問題についての当教室の考え方はこちらです。
靴下を履く/靴を揃える
靴を脱ぐ場所では、入室時に靴を揃えること。
これは他の習い事や保育園、学校などでも同じように言われると思うので、小さな生徒さんにも早い段階から声かけをします。
靴下については、規律の厳しい女学校などでは「履いてきた靴下とは別に、履き替えの予備を持ち歩くことが望ましい」とされていることもあったようです(!)
それはさすがに現代ではやりすぎと思いますが、裸足だとやはり困るので、サンダルを履いてくる時は靴下を持ってきてね、とお願いしています。
挨拶をする(目礼もOK!)
学校などでは「元気にハキハキ挨拶しましょう」と言われることもありますが、当教室ではペコっと目礼するだけでもいいので、対面した時に無視はやめましょう、とお伝えしています。
性格によって声を出すのが恥ずかしい場合もあるでしょうし、場面緘黙(かんもく)で配慮が必要な場合もあるでしょう。
演奏は、内省的な面ももっているので、「話したくない」という気分であってもレッスンに来る場合があり、挨拶だけテンション高くというわけにはいかないケースもあります。
ですが、無言で他者のスペースに入ると、「自分のことを無視された」と感じることもあります。また、「この人はどんな気持ち、意思でここにいるんだろう」と相手の様子が分からず、不安になるケースもあるかもしれません。
小さくても、声を出さなくても、「あなたのスペースにお邪魔します」という意思表示は必要だと考えています。
3つのシンプルなマナーにいろいろな理屈をつけてしまいましたが、普段からこんなに難しいことを考えているわけではありません。
大切にしていることを深く考えてみたら、このような気持ちが出てきました。
音楽を通して、お互いを尊重し合う大切さを出会った人とシェアできたらいいなと思っています。



