習い事を始めて2~3ヶ月、あるいは幼児のうちは、小さなキーボードでも充分ではあります。
しかし、小さい鍵盤や軽いタッチに慣れてしまうと、いざ本格始動!と思ってピアノを購入した時、重さや大きさのギャップに驚いて挫折してしまうことが多いのです。
ピアノを買い換えた途端「ピアノ嫌い」になってしまったという悲劇を避けるためには、レッスンを始めた段階で、購入するピアノについて計画しておく必要があります。
ピアノ購入前に知っておきたいポイント
ピアノには、電子ピアノとアコースティック(木製)のピアノがあります。
アコースティックのピアノには、ボックス型のアップライトピアノと、曲線型のふたがついたグランド・ピアノがあります。
電子ピアノ、アップライト、グランドにはそれぞれメリットとデメリットがありますが、正しい演奏フォームを身につけるためにはアコースティック(アップライト、グランド)のピアノで練習するのが基本です。
薄型のキーボードは鍵盤が軽く、音の強弱をつけるのが難しいため、好きな曲を弾きこなすためのテクニックが身につけにくくなります。
ピアノYouTuberがキーボードで素晴らしい演奏をしている動画もたくさんありますが、あのテクニックはアコースティックのピアノで練習を重ねたからこそできるもの、と考えておくと良いと思います。
電子ピアノ・アップライト・グランドピアノの違いと選び方
では、それぞれのピアノについて違いを見てみましょう。
・電子ピアノ:実際のピアノの音を録音し、鍵盤を押すとサンプリングした音が鳴る仕組み。
・アップライトピアノ:鍵盤を押すと内部にあるハンマーが弦を叩き、音を鳴らす。
・グランドピアノ:仕組みはアップライトと同じ。響板が大きく、繊細な強弱をつけられる。
環境や価格を度外視する場合、3つの中で最も選びたいのはグランドピアノです。
本来は、初心者のうちからグランドピアノで日常的に練習をして、繊細なタッチを学ぶべきと考えられています。
ですが、グランドピアノは巨大なので、現実的には難しいでしょう。音が響きやすいため、設置できるスペースがあったとしても、防音対策をしなければならないからです。
そのため、ピアノを始める時は、電子ピアノか、アップライトピアノか?で悩むことが多いかと思います。
電子ピアノとアップライトピアノには次のような特徴があります。
鍵盤 | 耐久性 | 価格帯 | ヘッドホン・Bluetooth・MIDI・アプリ | |
電子ピアノ | タッチが浅め | 10年・下取り不可 | 15〜50万円 | 標準搭載・連携可 |
アップライトピアノ | 表現の幅が広い | 50年・下取り可 | 50〜120万円 | 後付けで連携可 |
ピアノを選ぶ時には、なるべく何度かお店に足を運んで実際に触れてみることをおすすめします。
試弾を何度か繰り返すことで、自分やお子さんが使いやすい機能や特性が見えてくるはずです。
楽器店や家電量販店でピアノについて質問しても、必ずその日に買わなければならないということはありません。焦らずに検討して、後悔しない楽器選びをしましょう。
ピアノ購入のおすすめ方法|新品・中古・レンタルの比較
ピアノは、家族や友人から譲ってもらう以外に、新品ピアノを購入する、中古ピアノを購入する、レンタルで様子をみるという選択肢があります。
それぞれの価格相場や、特徴を比較してみましょう。
ピアノ | メリット | デメリット |
新品 | 状態が良く保証あり | 価格が高い |
中古 | 価格が安い | 品質にばらつきあり、見極めが必要 |
レンタル | 初期投資が少ない | 長期利用は割高になりやすい |
新品ピアノ(アップライト&電子ピアノ)
新品アップライトピアノは、楽器店で購入します。
電子ピアノと比較すると高額ですが、数年に一度調律をしておけば10〜12年使用してもリセールバリューが高いので、後々手放すことを視野に入れて購入するのも良いでしょう。
セールシーズンがあり、その時期なら最もお得に新品ピアノを購入できます。
教室によっては、紹介特典が受けられることも(当教室も楽器店の紹介特典があります。)。
新品電子ピアノは、楽器店、家電量販店、ネット通販など販路が豊富です。
電子ピアノは88鍵が揃っていて、タッチがしっかりとしているモデルを選ぶと長く演奏を楽しめます。
練習に適した電子ピアノの相場は、20万円前後から販売されています。
なお、アップライトピアノと比べると安価ですが、木製鍵盤の立派なモデルであっても楽器ではなく「電化製品」に分類されるため、買取はあまり期待しない方が無難です。
中古ピアノ(アップライト&電子ピアノ)
中古アップライトピアノは、楽器店や業者を通したピアノなら、専門家によるリペアがされているので安心して使えます。フリマアプリで売られているものは、コンディションがはっきりと分からないものもあるので注意が必要です。
年を重ねて音がまろやかになる「掘り出し物」も多いので、ピアノフェアなどで出会いを探すのも素敵です。
中古電子ピアノは、型落ちモデルであれば定価よりもかなり安い価格で購入することができます。
ですが、中には付属品や機能のアップデート期間が終了していたり、耐久性に難があるケースも。相場よりもあまりに安い中古電子ピアノは、コンディションを良く確認してから購入を検討するのがおすすめです。
レンタルピアノ
購入前のイメージ作りや、ピアノが届くまでの代替機としてすぐ使用できるのがレンタルピアノの良いところです。
しかし、初期費用こそお得に感じますが、長期間レンタルしていると購入した方が割安になるケースも。
何ヶ月、何年めの段階で支払い続けるレンタル料金が購入した場合の費用を上回るのか、あらかじめ計算しておくことをおすすめします。
ピアノ購入・レンタルのおすすめ方法(販売店・レンタル業者)
ピアノは、次のような場所で購入できます。
・楽器店(新品アップライト/新品電子ピアノ/中古ピアノ)
・ピアノ展示場(新品アップライト/新品電子ピアノ/中古ピアノ)
・家電量販店(新品電子ピアノ)
・ネット通販(新品アップライト/新品電子ピアノ/中古ピアノ)
・フリマアプリ(中古ピアノ/中古電子ピアノ)
楽器店・展示場でピアノを探す場合は
楽器店は、最新の製品事情に詳しいスタッフに相談しながら購入できるというメリットがあります。
ヘッドホンや楽譜といった付属品が、成約特典としてついてくることもあります。
教室によっては、講師の紹介特典でさらにお得になることもあります。
(私も、全国の島村楽器へ紹介可能な会員になっています)
デメリットは、接客されるのが苦手な場合は落ち着いて検討できないかもしれない点。
ですが専門店は品揃えが豊富なので、購入するしないは別として一度は訪問して損はないのでは?と思います。
実際、生徒さんの中にも楽器店で説明を聞いて、別の方法で購入したご家庭もあります。
家電量販店やネット通販でピアノを探す場合は
家電量販店やネット通販で購入することのメリットは、店舗に行かなくてもネットでも注文できる、金額に応じてポイントがつくので割安感があるという2点です。
デメリットは、最新機種や人気機種しか販売されておらず選べるモデルが少ないこと、楽器の専門スタッフが在籍していないと練習に適しているモデルかどうかが分からないこと、の2点です。
楽器についてある程度知識がある場合は、お得に購入できるかもしれませんが、ピアノにあまり詳しくない場合は一度楽器店を参考程度に見学すると安心して買い物ができるかもしれません。
フリマアプリでピアノを探す場合は
フリマアプリでの楽器購入は、よほどの出会いがない限り、あまりおすすめできません。
アップライトも電子ピアノも、専門家でなければ内部のことは分からないので、購入してから思わぬ不具合が出てくる可能性があるからです。
個人間取引はお得な買い物ができる一方でトラブルも多いので、安さで即決とならないように気をつけたいところです。
ピアノのレンタルを探す場合は
ピアノレンタルは、地域によっても受けられるサービスが異なります。
「ピアノ レンタル 楽器店」「電子ピアノ サブスク」などのキーワードで検索すると、お住まいの地域に出張可能な事業者が見つかります。
また、大手楽器店(ヤマハ、カワイなど)でもレンタルサービスを提供していることがありますので、公式サイトをチェックしてみるのもおすすめです。
番外:実家や知人から譲ってもらう時に注意すること
譲渡してもらう際にハッキリしておくべきなのは、「運送費用」です。
実家や知人宅のピアノを移動させて自宅に設置しようという場合は、楽器専門の引越し業者に依頼する必要があります。
買うより安いと思っても、条件(エレベーター有無、玄関運び出し可否)によっては意外と高額になってしまうケースもあり、さらに到着後の調律も必要なため、事前のお見積もりは必須です。
一般的な輸送費は、10km圏内で18,000円、40km圏内まで25,000円となっています。
これに調律費用がかかるため、近距離であってもおよそ50,000円が経費としてかかる計算になります。
物流の2024年問題を受けて、これからピアノの運送費用も高騰していくことが予想されます。
親きょうだい、よほど親しい友人であればスムーズかもしれませんが、安請け合いをすると運送費や楽器の状態によってはトラブルに発展する可能性がありますので注意してください。
といっても、アップライトピアノは本来、丁寧に使えば親子三代にわたって美しい音色を楽しませてくれるもの。SDGs的にも、ピアノが受け継がれていくのは素敵なことですね。
まとめ:後悔しないピアノ選びを!
電子ピアノでもアップライトピアノでも、「コレだ!」と納得して選び取るのが大切です。
自宅のピアノに愛着を持って接するからこそ、発表会やおさらい会、レンタルスタジオなどでグランドピアノに触れて、豊かな響きを楽しむ耳を育てることができるのではないでしょうか。